3年前 秋
「誰か山口邸を担当できるものはいないか!」
設計課長が少し怒り気味に言った。
最近、この会社では受注件数が増えてきて、担当者の負担が限界に近づいてきている。
「鈴木、お前はどうだ、あと1つくらいいけそうだろ」
「いえ、若林邸で少し設計変更がありまして、今手いっぱいです。」
昔は、私にやらせて下さいと言う人が多かったが、
最近の若者は逃げてばっかりだ。楽する事しか考えない。
と、心の中で課長は思ったが、
確かに、最近は残業が多くなってきているし、休日出勤もさせている。
スタッフを増やすことも検討しないといけない。そうも考えていた。
「近いうちにスタッフの増員を会社に要請してみる。それまで申し訳ないが
誰かやってくれないか。」
全員下を向いて黙っている。
そんな時、
「課長、私、できる範囲ですが、みなさんのお手伝いをさせて下さい。」
「えっっ!」
みんなの視線が一斉にお茶を出し終わった事務員の方に集まった。
続く
kanna