「私、事務の仕事と言っても、割と時間を持て余していますし、
ずっと前から、設計の仕事がしたいと思っていたんです。」
「そっか、そう言えば君は、建築の学校を出ていたんだったな。
でも、やるとなったらけっこうハードだぞ。仕事を覚えるのも大変だと思うが。」
「そうですね、するとなったら中途半端なことはできないと思いますが
ちゃんと勉強しますし、どうしてもだめな時は、周りの人に助けてもらいます。」
「そうか、そこまで言うのなら、できることから手伝ってもらうことにするか。」
「部長には私から話をしておくよ。」
「はい、ありがとうございます。」
やりたいと言っても、彼女はもう大学に行く子供がいるほどの歳だ、
しんどくてすぐに音を上げるかもしれない。
課長はそう思ったが、なにより、彼女の気持ちを尊重したかった。
それに、他のメンバーにとってもいい刺激になるだろう。
そう思ったのだった。
「それはそうと、学校は出ているが、確か、資格は持っていなかったな。」
「はい、卒業後一度受験したのですが、合格できなくてそれっきりです。」
「もしよかったらだが、目指してみないか。」
「施主と打ち合わせをする時には必要になるし、それに、万が一合格したら
資格手当が付くぞ。」
「もう課長、万が一ってどういう意味ですか!?」
「そうだったな、やるからには合格する気持ちでやらないとな。すまん、すまん。」
そんなこんなで、彼女の建築士へに向けての挑戦が始まったのだった。
続く
kanna