ニ級建築士 製図試験 PR

二級建築士設計製図試験お疲れ様でした。

設計製図試験、お疲れ様でした

製図試験を受けられたみなさん。お疲れ様でした。
今年初めて製図試験を受験された方、受験経験のある方、いろいろおられると思いますが、製図試験独特の空気感や緊張感、いつもとは違うところ、いろんな思いが、試験後は頭の中を駆け巡ったと思います。

自分本来の力が出せなかった。出来るはずなのにできなかった。いつもはしないミスをしてしまった。
多くの方がこのように思っているかもしれません。

例年、私が感じることですが、

設計条件については、初めての条件に戸惑うケースが多かったりします。例えば、
「階段は、安全を確保するために、踊場を設ける。」
これまで練習で踊場のある階段は作図してきたと思いますが、改めて言われると、「あれっ、どうすればいいの?」ってなる場合もあります。

作図のスピードですが、これは割と多くの方が、いつもより短時間で描くことができた。このように思っているのではないでしょうか。
おそらくですが、練習では出せない集中力をもってして作図ができるからだと思います。
「本番で初めて時間内に完成させることができた。」
このような感想を試験後よく聞きます。

作図上のミスですが、これは、いつも通り描けたという人と、普段はしたことがないような有り得ないミスをしてしまった。という人に分かれます。もちろん、普段行なうような小さいミスをいくつかしてしまったという人もおられます。
その中で、こわいのはやはり、普段したことがないようなミスです。意外に大きなミスだったりします。試験中に気が付けばいいのですが、本試験だとなかなか気付けないんですよね。

試験後は、講座の掲示板にたくさんの投稿をいただきました。また、メールでも試験の報告をしてくださいました。
多くの意見は、ミスした点についてどの程度の減点になるのか、条件についてどのように対応すればよかったのかなどです。
今回のブログでは、そんな多くの受講生の方が気になったところをピックアップしてお話しようと思います。

多目的室の計画

今年の課題は「専用住宅」ということで、ほぼ全てと言える受験生の方は、二世帯住宅や趣味室のある住宅などを試験対策として行なってきたと思います。過去問題を見てみましても、専用住宅の課題は様々ありました。
なので、多目的室という言葉が出てきても、それほどは驚かなかったと思います。ほぼほぼ想定の範囲内です。多目的室に関連させて屋外テラスを設けるということも、練習でしてきたことなので、無難に対応できたかなと思います。

自然換気及び採光・公園の景観を眺望できる計画

昨年度の試験でも、自然採光と自然換気という条件が出てきています。また、環境負荷低減という言葉もありました。今年は、環境負荷低減という言葉はありませんでしたが、省エネルギーについては、大きなテーマとなっていますので、今後も出てくる可能性は高いと言えそうです。

具体的にどのように解答すればいいかですが、適切に窓を設けることができれば、問題はないかなと思います。その部屋がコーナーになっている場合は、2方向に窓を設けることができればベターですが、全ての居室に対してそのようにする必要はありません。と言うか至難の業です。
個人的には、吹抜けが求められていますので、吹抜けを通じて1階から取り込んだ空気を2階に設けた窓から逃がすような計画にするのもいいかなと思っています。
(講座の最終課題のような感じです。)

公園を眺望できる計画ですが、できれば、全ての居室に対して公園側に窓を設けることができればよかったですが、なかなか難しかったかもしれませんし、そこまではする必要はないと思います。特に2階は3つの居室がありますし、吹抜けが南面に配置される場合は、スペースが限られてきます。使用頻度の低い和室などは、南面でなくてもよかったと思います。

先ほど出てきました「採光に配慮する。」という条件ですが、採光は必ずしも南面の窓から取る必要はありません。東西南北いずれの方向も可能です。
(ただし、窓から隣地境界線までの距離が近いと、基準法上の採光が確保できない場合があります。)

1階については、多目的室とLDKだけなので、両室とも南面に窓を設けることはできたと思いますが、多目的室と台所の関係がありますので、居間部分を南面に設けることができなかった人がいたかもしれません。これはどちらかと言うと好ましくはないかもしれませんが、LDKは全体で1室にまとまっていますので、居間に対して窓が設けられなかったとしても特に大きな問題はないと思います。プランにもよりますが、私でしたら減点はしないか、したとしても大きな減点にはしないと思います。

敷地条件・北と西の二方向接道 南側は公園

二方向接道の場合、考える必要があるのは、道路から敷地への出入口の計画と駐車スペースの配置です。
メインアプローチとなる人の出入口ですが、条件がありませんのでどちらの道路からでもOKです。車も同じです。どちらの道路から出入りさせてもいいでしょう。

受講生の方から質問があったのですが、
「道路から敷地への出入口は、住宅用と多目的室用とそれぞれ必要でしょうか。」
出入口の明確な分離が求められていましたら、それぞれ設けることが必要になってきます。この問題では、出入口の明確な分離は求められていませんし、多目的室を利用する人は趣味仲間や近隣住民なので、知っている人です。(不特定多数ではありません。)なので、道路から敷地への出入口は1つでもいいと思います。
ただ、外部から直接行き来ができる出入口が求められていますので、アプローチも別に設けるという考え方もできます。なので、この点については、どちらで対応してもいいかなと思います。
ちなみに分けた場合ですが、敷地内で間に塀を設けるなどはしなくてもいいです。通行ができないとかえって不便になります。
(不特定多数が利用する場合は、その部分と住宅部分は塀などを設けて分けておきたいです。)

角地ということで、いつもなら交差点付近には斜線がかかっていて、この斜線部分は駐車スペースやその出入口を設けてはいけませんという条件があるのですが、今回はありませんでした。ただ、条件がなかったからと言って、駐車スペースを設けるのは好ましくありません。交差点からの車の出入りは危険が伴いますので、基本的には避けるようにしてください。その範囲ですが、7m以上としておけば問題はないです。

駐車・駐輪スペースの計画

それぞれ2台分、5台分と求められましたが、自家用なのか来客用なのかの指定がありませんでした。専用住宅なので、基本的には自家用と考えていいと思いますが、どちら用とは考えないで、とりあえず求められた台数分が敷地内に計画されていれば大きな問題はないかなと思います。
(建物出入り口までの動線は、もちろん必要です。)

駐車スペースについてですが、搬入についての条件がありましたので、少なくとも1台分については、多目的室の外部出入口までの動線を確保することが必要です。もちろん2台ともそうしてもいいです。
その駐車スペースから多目的室までの通路ですが、できれば短い方がいいですが、特別近くにする必要はないです。少しくらい長くなってもいいでしょう。それと、必要に応じて設けるスロープですが、このスロープは、搬入のためにこの動線上に設けるといいと思います。

自転車5台分についても条件がありませんので、割り振りは自由に考えて大丈夫です。ただ、家族が3人なので、自家用は3台分までと考えていいと思います。その場合は、2,3台を多目的室よりに設けてください。5台分全てを両方から利用できるようにしてもいいかと思います。

多目的室への内部動線

建物内から多目的室への動線ですが、問題条件として台所からの行き来がありますので、台所からはもちろん行き来できるようにする必要があります。それとは別に、廊下からも行き来ができるようにするかどうかですが、これは、動線の基本的な考え方としては必要と言えます。例えば廊下からの出入口がない場合、2階から降りてきて多目的室へ行くのに、必ず台所を通らないと行くことができないので、少し不便と言えます。
台所から行き来させることで、廊下からは出入りできないように計画した人がいるかもしれませんが、これはおそらくですが、減点を受けることになると思います。ただし、それほど大きな減点ではないと思います。

多目的室は、床を土間コンクリート仕上げ・下足利用

ポイントとなる点は、床高さの設定と段差処理の方法です。
まず床高さですが、+100から200くらいで考えるといいです。200を超えると出入口のポーチは1段ではなく2段以上必要になります。また、スロープもその分長く必要になりますのであまり高くしない方がいいと言えます。

段差処理ですが、「必要に応じて段差処理を行う。」という特記があるので親切ですね。
(私が作る問題だとだいたい無いです。条件がないのに、段差処理ができてないと添削で指摘します。(笑))
段差が生じるところですが、台所と行き来する部分、廊下から出入りする部分、この2つになります。ここは、式台や踏み石、階段などを設けるようにしてください。
外部から出入りする部分ですが、ポーチをほぼ床まで高くして、ポーチからは段差なしで出入りするようにします。スロープから台車で荷物を搬入することが想定できますので、段差は設けない方がいいです。
屋外テラスとの出入りですが、ここも段差が生じないように、テラスの床高さは多目的室と合わせるようにするといいでしょう。

矩計図の切断位置は多目的室

作図条件については、矩計図の切断位置についてが一番質問が多かったです。
掃き出し窓と土台の関係です。

その前に、矩計図の切断条件を確認しましたら、プランニングにおいて注意する点があります。そうです。多目的室の上部には2階を乗せないといけません。
これは一部でも2階があればいいことになります。多目的室の全てを平家にすると、切断する位置がなくなってしまいます。

話を戻しますが、掃き出し窓で切断した人が何人かおられました。
「土台は記入するのですか?」
という質問があったのですが、これは、掃き出し窓で切断した場合は、その部分は土台がありませんので、作図上は記入しないことになります。(玄関部分を考えていただくとわかりやすいと思いますが、玄関の土間部分とポーチとの間には玄関扉がありますが、そこに土台はありません。)
ただ、作図条件として、土台の名称・断面寸法を記入する。というのがありますので、この場合は、土台があるところで切断するというのが、好ましい解答と言えます。
その土台があるところですが、掃き出し窓があるところ以外です。つまり、壁になっているところと腰窓があるところ、となります。
お勧めの対応方法としましては、1階は壁、2階に開口部がある位置を選んで切断するのがよかったかなと思います。そのようなところがなければ、プラン上作ってもOKです。

いち早くこの作図条件に気付いていれば、より無難な対応ができたと言えそうですね。

今年の問題の難易度

今年の問題の難易度ですが、それほど高くはない。という判断です。

プラン上、迷うところはいくつかあったかもしれませんが、それは自由度が高いと言える部分でもあります。プランができなかったとか難しかったという意見はあまりなかったですし、これと言ったサプライズもありませんでしたので、難易度としては、それほど高くはないと思います。

作図についてもいつもくらいの作図量だったと思います。もしくは、延べ面積の設定が小さかったので、多少作図量は少なかったかもしれません。立面図も一番描きやすい南面でした。バルコニーが出てくると少し厄介と思っていましたが、それもなかったです。
矩計図の土間コンクリートが、唯一苦戦したところと言えるかもしれません。

参考プラン図

試験当日の夜に考えて、翌日少し変更を加えたプランです。

アプローチは、住宅用と多目的室用とそれぞれに設けました。広い庭とLDKが東西に広く、南面に窓を多く設けることができますので、自然換気や採光を図ることができ、公園も眺めやすくなっています。また、LDKから取り込んだ空気は、吹抜けを通じて2階の階段や廊下、ワークスペースに設けた窓から抜けていきます。(パッシブデザインとなっています。)

総二階で四角くまとめたプランもメンバーズ掲示板にアップしていますので、受講生の方は、よかったら確認しておいてください。

再現図面の採点のお申込み

最端製図.comでは、試験で解答した図面の採点を行なっています。
もう一度、同じ図面を描いていただく必要がありますが、採点を希望される方、よかったら申し込んでください。

 最端製図オンラインショップ
再現図面の採点(令和5年度)をクリックして手続きを行なってください。

最端製図.comの受講生以外の方でもお申込みが可能です。
自分の点数と、参加者の中での順位がわかります。参加者全員の点数もわかります。(名前はもちろん非表示です。)

今後の設計課題(タイトル)について

今年の問題は、これまででしたら、「趣味(アウトドア)室のある専用住宅」もしくは、「サークル仲間を招いて集うことができる多目的室のある専用住宅」などになっていました。このことから今後を予想すると、趣味室のある住宅や二世帯住宅など、店舗を併設していない専用住宅は、一括りで「専用住宅」という発表になる可能性があります。
つまり、今年の試験対策みたいに、いろんなケースを想定した対策が必要になってくると言えます。
前向きに考えると、いろんなことが勉強できていいのですが、それはそれでやはり大変ですよね。

ただ、
その大変さを乗り越えてきた人やきちんと試験対策をしてきた人が合格する試験、という考え方もできると思いますので、今後、この設計製図試験に挑戦する人は、合格するために必要な努力を、しっかりとしていただきたいと、このように思います。
そして私は、そんな頑張る人を引き続き応援していきます。

kanna